7月上旬に行って来ました
桃花台視察ツアーの前に、桃花台新交通のモデルとなったであろう、山万ユーカリが丘線を視察しました。京成ユーカリが丘駅
ユーカリが丘ニュータウン開発に併せて志津〜臼井(現・うすい)間に設置された新駅です。2面4線に拡張可能な設備を有していますが、待避線が設置されているのは上りの方だけです。
ユーカリが丘駅のある、京成本線は都営浅草線に直通する列車が多く設定されており、都心への連絡は申し分ありません。
しかし、ユーカリが丘には特急が止まらないのが難点です。
ただ、京成本線の特急は殆どが上野行きで、都営浅草線に直通する列車(通勤特急、快速)は全て停車します。
これは、京成ユーカリが丘駅の駅名標です。
新しいタイプもあるのですが、これは古いタイプの方です。
注目するべきは隣の駅の「うすい」が漢字表記の「臼井」から改められていません。
京成臼井は北総線の「白井(しろい)」と字形が紛らわしいので、北総線の都心方面延伸に伴って、平仮名の表記に改められた経緯があります。
ユーカリが丘線のユーカリが丘駅
こちらは、ユーカリが丘線の駅名標です。「ユーカリが丘」が特殊なフォントで表記されています。
ユーカリが丘線は車長の短い車輌の3両編成ですが、駅名標は駅の柱の3カ所に設置されています。
これは、ユーカリが丘線の車止め方向の写真です。
新交通システムでは当たり前なホームドアやホーム可動柵がないばかりか、黄色い点字ブロックや乗車位置目標の線、広告スペースが全くないので、姫路市営モノレールの大将軍駅並みに殺風景です。
因みに、ユーカリが丘駅には待合室が設置されており、ホームの奥行きはかなり広く作られています。
こちらは、ユーカリが丘駅の車止めと反対側の写真です。
注意書きの看板の後ろに2灯式の信号機が設置されています。
公園駅方面から来た軌道はS字を描いており、素直にユーカリが丘駅に直進していません。
駅設置において、何か紆余曲折があったのかも知れません。
ユーカリが丘駅構内には燕の巣があります。
そのため、ホームの一部には鳥の糞で汚れている箇所があります。
因みに、駅構内の燕の巣は、写真の場所を含み、2〜3カ所あります。
ユーカリが丘駅の歩道橋上の駅前広場から見た、ユーカリが丘駅です。
写真では、列車が停車していますが、列車がないと、ユーカリが丘駅ホームから、駅前広場が一望できます。
これは、ユーカリが丘線の時刻表です。
通常は20分間隔のダイヤですが、平日の通勤・通学時間帯は7〜8分間隔になります。
尚、ユーカリが丘線の1周の所要時間は約20分くらいですので、通常は1本の編成で運行されています。
そして、平日の通勤・通学時間帯となれば、2本の編成で運行されます。
ユーカリが丘線の車輌
駅構内で撮影に勤しんでいるうちに、列車が来ました。今回の視察では、「イエ・コレ」のラッピングの「こあら3号」が運用されていました。
「こあら1〜3号」の正式な形式は1000系で、1100-1300-1200の編成を組んでいます。
また、「こあら1〜3号」はVONA(Vehicle Of New Age)という名前でも呼ばれています。
路線距離が2.7km程の短さなので、最頻7〜8分間隔でも、予備を含めて3編成あれば間に合うくらいです。
また、ユーカリが丘線は車輌にスカートが付いているのが他の新交通にない特徴です。
これが「こあら号」の正面です。
アメリカの地下鉄電車BAATによく似た非対称の顔です。
方向幕は装備されていますが、「ユーカリが丘−公園−ユーカリが丘」の表示以外になることはありません。
因みに、コアラの絵は開業当初よりあったものではなく、「こあら号」の愛称も途中で付けられたものです。
これは運転台の写真です。
この運転台の下には「回送」と書かれたサボがおいてあり、方向幕があるにもかかわらず、それを使用していないことが分かります。
因みに、車両基地のある女子大行きの表示を出した車輌の写真が、こちらのサイトに掲載されています。
運転台越しに、信号機が見えます。
ユーカリが丘線は新交通では珍しく、ATSを採用しています。
ATSを採用した新交通はこのユーカリが丘線以外に、西武のレオライナーがあります。
通常の新交通とは違って、モノレール或いは札幌市営地下鉄のような中央案内方式を採用している特殊な軌道の仕組みの都合上、ATS地上子が側面に設置されています。
車内の写真は、割と乗客がいたので、撮影はしていませんが、車内設備としてはラインデリアを装備しており、一見冷房車のようにも思えますが、実は非冷房車です。
東急の「空ーラー車(クーラーキセのみがある非冷房車)」みたいなものでしょうか。
窓は上段が内折れ式になっています。
前面眺望ですが、車内の乗務員室扉の窓が狭い上、正面の窓も決して大きくないので、余り望めません。
座席はロングシートですが、バケットシートのように1人分の区分表示がされています。
車内広告はユーカリが丘関係のものばかりが出ていました。
完全に地域に密着した交通機関です。
ユーカリが丘線の軌道・設備
中央案内方式なので、側方案内方式の他の新交通とは違って、高架橋の作りがシンプルになっています。まるで、遊園地のジェットコースターのような軌条になっています。
駅は途中の公園駅を除いて、1面1線のシンプルな構造になっています。
また、前方となる側には後方確認のためのバックミラーが設置されています。
平成4年頃に開業した新駅の地区センター駅には、ホームに安全柵があります。
地区センター駅の直ぐ近くには、SATYの立体駐車場があります。
宛ら、SATY駐車場前駅といった感じです。
因みに、ユーカリが丘線の各駅間の所要時間は2分と設定されていましたが、地区センター駅の開業により、ユーカリが丘〜地区センター間と地区センター〜公園間の所要時間は1分となりました。
これは、公園駅の駅名標です。
起終点のユーカリが丘駅以外は、このようなペンキで書いたようなシンプルな駅名標が用いられています。
また、公園駅の駅名標は、地区センター駅開業後、「ユーカリが丘」の表記の上にテプラか何かで「地区センター」の駅名に書き変わっています。
これは、ユーカリが丘線の女子大駅です。
コンビニが併設されています。
ユーカリが丘線の駅は起終点のユーカリが丘以外は無人駅です。
沿線にはまだ、田園風景が残っています。
田園風景と新交通とは如何にもミスマッチですな。
ユーカリが丘線の車両基地
ユーカリが丘線の車両基地は女子大駅にあります。これは、女子大駅ホームから見た、車両基地の様子です。
奥に休んでいる編成が見えます。
こちらは、沿線の道路に回って、ユーカリが丘線車両基地の入り口側から撮ったものです。
車両基地で待機していたのは「こあら2号」でした。
駅の近くにある、研修庫にも車輌が入っており、恐らく、それは「こあら1号」だと思われます。
これは、女子大駅の車両基地への分岐装置の写真です。
側方案内方式とは違って、軌道がそのまま移動するという、跨座式モノレールの分岐装置のような構造になっています。
公園駅にも同様の分岐装置があり、こちらは営業線上にあるので、列車が通過して、5分位した後にポイントを切り替えています。
公園駅の分岐を通過するとき、何故か、列車は徐行運転を行っています。
所感
ユーカリが丘から出た列車が環状区間を反時計回りに回って、ユーカリが丘に戻るという運行形態のため、しょっちゅう列車の向きが変わるという珍しい運行を行っているのが特徴的です。また、全区間2.7km程であるため、運賃は全区間200円均一にしていたり、駅及び車内放送が省略されたりと(ユーカリが丘駅出発時に運転手がアナウンスする程度)、あらゆる面においてシンプルなシステムですが、ユーカリが丘線とて、問題がないわけではありません。
問題点その1:バリアフリー対応
ユーカリが丘線の各駅は、地上に近いレベルで設置されたような駅もあるが、全て階段での移動を要する駅であります。女子大駅にはスロープが設置されていたが、それ以外の駅には、エレベーターやスロープが設置されていませんでした。
ユーカリが丘線のホームページを見ると、事業部員全員がサービス介助士を取得とあり、独自のバリアフリー対策を行っているようですが、ユーカリが丘駅以外が無人とあれば、余り役立ちません。
やはり、環状部分の「地上駅」にはスロープの設置、公園〜ユーカリが丘の各駅はエレベーターの設置を検討して欲しいです。
問題点その2:新型車両の導入
現在使用されている「こあら号」であるが、1982年の開業以来、使い続けられています。実際に乗車してみて、ガタが来ているようには思えないが、今時非冷房なのは戴けません。
しかし、ユーカリが丘線と同様の構造の新交通システムは今年9月末で廃止になる、愛知県小牧市の桃花台新交通しかないため、なかなか新造車輌が作られる機会がありません。
その桃花台新交通のピーチライナーも、そのままの形ではユーカリが丘線に入線させることができないので、大掛りな改造を行う必要があり、廃止となるピーチライナーの再利用もなかなか難しいです。
その他に問題点があるかも知れないが
ユーカリが丘線は極めてシンプルでコンパクトな新交通であると共に、接続している京成線も、都心への直通が乗り換えなしで実現しているため、さほど不便なところがありません。また、ユーカリが丘線の周辺のバス路線は、井野地区にある勝田台方面のものしかなく(しかも、停留所がユーカリが丘線の駅と被らないようにしてある)、特に、女子大駅近辺などはユーカリが丘線以外の公共交通機関が存在しません。
そのため、ユーカリが丘線が廃止の危機に陥る危険性は少ないと思われます。
次回は、このユーカリが丘線を参考にしたと思われる、桃花台新交通の視察レポートになります。